我孫子武丸『ディプロトドンティア・マクロプス』講談社文庫

 「……マチルダさんって、コアラじゃないだろうね」私は頬をひきつらせながら言った。
 少女は驚いたように顔を上げて答えた。
 「違うわ!コアラですって?カンガルーよ!すっごく素敵なカンガルーなんだから!」
 素敵なカンガルー。
 「なるほど」私は半ば放心しながら言った。
 「素敵なカンガルーね」
 少女は初めて微笑みらしきものを浮かべた。 p.23

 教授は叱られた子供のように首をすくめ、上目遣いに私を見上げると、こくりと頷いた。
 「うん。実はそうなんだ。すまない」 p.190

 「――ミルクをもう一杯どうだね?どんどん飲んだ方がいいよ」
 「いただきましょう。一リットルでも二リットルでも飲めますよ」 p.196