澤見彰『燃えるサバンナ』

 マサイにふりかかる災いのすべてを、呪われた名の娘ひとりに背負わせて、氏族すべてを守ろうとしたのだ。  p.190

 

 赤いたてがみのライオンをさがすため、たったひとり旅に出た大シバ。 
 大シバは、どんなに疎まれても、兄レムヤのことや、村の衆のことも大事に思っていたのではないか。皆とともに生きていきたいと願っていたのではないか。だからこそ、命をかけて雨をふらそうとしたのではないか。
「愛しているものに、おなじくらい愛し返されて、気持ちにこたえてもらえるのなら、この世の苦しみはほとんどないだろうに」
 マティンの言葉を聞いて、シバの脳裏に、いとこのレンギヤの顔がうかんだ。  p.237