小川一水『時砂の王』ハヤカワ文庫JA

「私は二千三百年後の世界から来た。だが、ここの未来からではない。多くの滅びた時間枝を渡ってきた」
 彌与は息を殺して、男の話に聞き入った。  p.38

時の風はすべてを吹き散らし、時の砂はすべてを埋め尽くす。誰よりもそれらに身をさらしてきたのがOという男です。もしも、彼を支えられる女がいるのならば、私はそうさせるでしょう。そんな女は、十万年の間に一人もいませんでしたけれど」  p.161