墨谷渉「パワー系181」(『パワー系181』集英社 収録)

目を閉じて測量男が現れてから帰るまでを通しで頭の中で繰り返した。リカのことをパワー系だ、と測量男は言った。パワー系。  p.33

 リカは「パワー系個人クラブ・リカのお部屋」と紙に書いてみた。お部屋?なんかこれが性的サービスを連想させるな、良くない。リカの部屋、リカの場所、リカの家、リカの時間、なんか違う、風俗じゃないんだけどマニアックな雰囲気を伝えなきゃ、わかる人にはわかる、瞬時にわかる、そんな世界。リカの世界。  p.34

 リカは男を絞めながら、この楽しさは何だろう、と思った。素手なら圧倒的に有利とはいえ、一歩間違えれば怪我では済まなくなる危険さえあるこの密室での状況。どこの誰だか知らない、酒気を帯びた変態の中年をボロ人形のように扱って嬲りまわし、生殺しにして楽しんでいる、自分のほうが変態なのだろうか。そもそも変態って何なんだろうか。  p.75

 フェチ小説(笑)。人間の趣味嗜好欲望にはいろいろな形があって限りない、、、。同時収録の「外伝――測量男の手記」のが好み。