竹内真『ビールボーイズ』東京創元社

「ビールってさ、びっくりするぐらいまずいねえ」
「うん。まずい」  p.17(第一回ビール祭 十二歳・秘密基地)

「だから、俺は決めた。俺は先祖ができなかったことをやってやる。――修行の旅で腕を磨いて、いつか新山でビールを造るんだ」  p.159(第七回ビール祭 二十二歳・成田空港)

「そんなものは若造の空絵事だって説教されたけどな。空絵事を実現させるのが若造の特権だって言い返したら黙っちまったよ。あんたはちょっと心臓悪くしたくらいで空に絵も書けなくなったかって説教してやったら、向こうの方が泣きだした」
「駄目だよ、義理のお父さん泣かしたら」
「何言ってんだ。ありゃあ間違いねえ、俺の男気に感動して泣いたんだ」  p.163(第七回ビール祭 二十二歳・成田空港)

 そして僕は、こんな風にも思うのだ。――イギリスの若者4人にできたのだったら、ひょっとすると僕らにだってできるんじゃないだろうか?  p.192(ビールコラム8 ビールと運動 より)

「もうちょっと待ってろ」正吉は悪びれもせずに笑った。「ビールってのは、我慢すりゃあするだけうまくなる酒だぞ」
「我慢してるうちに倒産したりすんなよ」  p.284(第九回ビール祭 二十八歳・地下倉庫)

 下戸でもビールがたまらなく飲みたくなる爽やかで清々しい4人の友情と絆の物語。それにしてもタイトルが意味深。そのために…と下司の勘ぐりをしたくなって困った。
 ちなみに「ビール祭」とは、メンツで集まってみんなでビールを飲むこと。ビールにまつわるエピソードの積み重ねが4人の友情の歴史なのだ。第十回ビール祭では、そう来るだろうなと思っていても、不覚にも涙。十回までしか語られないが、その後も、順調に回数を重ねていった、、、と思いたい。
 友情とビールに乾杯!!!