米澤穂信「玉野五十鈴の誉れ」(『儚い羊たちの祝宴』新潮社 より)

「わ、わたし、わたしは。あなたはわたしの、ジーヴスだと思っていたのに」
暗い夜のせいで見間違えたのだろうか。ほんの少し、五十鈴の表情が動いた気がした。
「勘違いなさっては困ります。わたくしはあくまで、小栗家のイズレイル・ガウです」  p.181