山崎ナオコーラ「私の人生は56億7000万年」(『29歳』収録 日本経済新聞出版社)
「本、本。この先の人生において、恋人がいても本がないのと、本があっても恋人がいないのと、どっちがいい? って聞かれれば、迷わず本のある人生よ」 p.14
誉められたい。人から認められないと、生きている気がしない。
でも周囲から正当に評価されている人、等身大に認められている人が、この世に何人いるというのか? ゼロだろう。
自分にしかできない仕事をして、みんなに必要とされて、みんなから「すごいね」って言われたい。 p.17
「まあ、今の時代、三十まではモラトリアムだよね」
カナは、また急に話を変えて、つぶやいてみた。
「二十九でモラトリアムやってて、三十でいきなりモラトリアム卒業。って、そんな甘いものなのかな? この世は?」 p.20〜21