濱野京子『フュージョン』講談社
跳びながら、風を感じる。その瞬間が心地いい。考えてみれば不思議だ。縁がなかった子たちと、学区から離れたところで、縄跳びなんかやってる。あたしたちは、お互いの境遇というのか、家族だとか、それぞれの友だちだとかについて、一切話すことなく、ただ跳ぶ。あとはたわいない軽口を言い合うだけ。でも、それが意外と楽しかったりする。 p.69
「ねえ、何かさ、夢中になってる朋花っていいよ。あたし、応援するから。朋花ってさ、できること、自信を持ってやってないみたいな気がしてたんだ。ホントはもっとできるのにって。リレーだってそうだったじゃん」 p.115
あたしは初めて、美咲に対して同情っていうのか、愛おしさみたいな思いを抱いた。あたしたちの距離は思ったほど遠くないのかもしれない。それぞればらばらでも、どこかで重なるものを持っているんだ、きっと……。 p.162
跳びながら、あたしは赤いキャップをかぶった。その瞬間、音が消えた。何も聞こえない。何も見えない。縄が回ってる。そしてただ、あたしは跳んでいる。二人が回し、二人が跳ぶ。あたしたち、四人だけの世界。四人だけが一つになっている。一つなのに、黒と白と青と赤と、それぞれが違う。違うけどやっぱり一つなのだ。 p.226
優等生の美咲、学校の問題児視されてる玲奈、ムードーメーカーなターナーの玖美、そして朋花、美声の放送部員彩乃、喫茶の店しずくのマスターで玖美のおじの類。失踪した兄の悠也。ダブルダッチ。
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