恩田陸「夜明けのガスパール」(『不連続の世界』収録)幻冬舎

 物心ついた頃から、こうしていつも列車に揺られていたような気がする。
 いつもいつも、こうして一人で、夜の底を運ばれていたのだ。
 眩暈のようなデジャ・ビュを覚えた。次に気付いたら、老人になっているのではないか。レコード会社に勤め、ふわふわ浮き世暮らしをしてる不良中年でいるつもりが、ハッと気が付くと、死期の近い老人になって、こうして列車の窓から外を眺めているのではないだろうか。  P.273

「木守り男」「悪魔を憐れむ歌」「幻影キネマ」「砂丘ピクニック」「夜明けのガスパール」の全5編収録。楠巴って、もしかして『中庭の出来事』に登場した人物かしら?調べようっと!