大崎梢『夏のくじら』文藝春秋

恋は水色だっけ。いいよね、水色。やっぱり空と海の色だよね。私、これだけは迷わないでいようかな。たくさんの色の中から、自分で選び取った色だもん」  p.87

けど踊りはええぞ。ぜんぜん別の世界をくれる。からっぽな自由があるがよ。それやき――」
「は?」
「めちゃ気持ちええ」  p.218

 それを見ただけで踊る前から熱いものがこみ上げた。どの顔にもがんばれよ、しっかりなと書かれてあるようだ。見ず知らずの人に見守ってもらい、応援してもらうというのは、何物にも代え難い感動をもたらす。  p.225

 よさこいはたかだか五十数年の歴史しかないが、それでも人から人に受け継がれ、出会いと別れをくり返してきた。
 カジの父親も若い頃にきっと踊ったのだ。その息子が一対の鳴子に思いを託し、そして鯨井町の子どもが近い将来、今日のことを想い出として語る。
 そのとき自分は、多郎は、どこで何をしているのだろう。  p.257

 未来は、決まっていないことの方が多いよ。
 南国高知には恋以外の花も咲くよ。  p.311

 恋は水色、祭りは一期一会。主人公篤史だけでなく祭りにかかわる様々な人たちの様々な思いに胸が熱くなる。よさこい、観に行きたーい!