仁木英之「飄飄薄妃」(『薄妃の恋』新潮社 より)

(そんな俺はどうしたいんだろう。先生とどうなりたいんだろう)  p.121 12行目

(じゃあ先生は結局、俺とどうしたいんだろう。どうなりたいんだろう)  p.121 19行目

「本当に心から想っているなら、信じられるはずです」  p.138

 待つのはつらい。希望があっても苦しいものだ。
「ま、現実はそうもいかないんだけどね」
「また夢も希望もないようなことを」
 鼻白む王弁をみて、僕僕はくすりと笑った。
「でもキミはそれを乗り越えたんだ。だからボクは帰ってこられた。信じるところのない者のところへ、帰ることはできない。あの男も乗り越えることが出来る想いをもっていればいいな」  p.139

 『僕僕先生』のまさに続き。読み心地がいいライトなユーモア中華ファンタジーの連作短編集。5年ぶりにまた僕僕先生と旅に出た王弁。その行く先々で遭遇する不思議なエピソードを描く。旅の道連れに薄妃が加わり、さらに物語はパワーアップ。王弁の想いが受け入れられる日は来るのか。まだまだ受難の日々が続きそう(笑)。

 「羊羹比賽 王弁、料理勝負に出る」「陽児雷児 雷神の子、友を得る」「飄飄薄妃 王弁、熱愛現場を目撃する」「健忘収支 王弁、女神の厠で妙薬を探す」「黒髪黒卵 僕僕、異界の剣を仇討ちに貸し出す」「奪心之歌 僕僕、歌姫にはまる」