荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』角川書店

「たしかに、その言葉は現在使われていない。けれども、言葉が消えても関係性は続くんだよ。泉水子には選択権があって、われわれにはない。わきまえろというのはそういう意味だ」
 深行は泉水子を指さした。
「これが女神だからとか何とか、そういうトンデモ話をしているのか」
「女神と呼ぶのも方便だが、守り育てられるさだめの女の子ではある。それも、一人二人の手ではなく、多くの人間によって」
「こんなのが?」  p.84〜85

「当たり前でしょう。泉水子って、けっこう特別な女の子だったんだね」  p.112

 自分から知ろうとしなければ、何ひとつ見えてはこないのだ。命がけだということも、それを知ってて行うか、知らないまま他人まかせで行うかでは大ちがいだった。
(わたしはもっと、自分のことに責任をもちたい。それがどんなにへこむものごとであっても――たとえ、ふつうの友だちを見失ってしまうことであっても、知るべきことは知っておきたい)  p.269

 角川書店で新創刊されたレーベル「銀のさじ」の第一回配本作品。以下、見かえしの部分から。
 山伏の修験場として世界遺産に認定される、玉倉神社に生まれ育った鈴原泉水子は、神宮を務める祖父と静かな二人暮らしを送っていたが、中学三年生になった春、突然東京への高校進学を薦められる。しかも、父の友人で後見人の相楽雪政が、山伏として修業を積んできた自分の息子深行を、(下僕として)泉水子に一生付き添わせるという、しかし、それは泉水子も知らない、自分の生い立ちや家系に関わる大きな理由があったのだ。

 現代日本を舞台にした和風ファンタジー。まずは第一歩。内気な少女泉水子が運命を受け入れどう成長し変容していくのか、続きがとても楽しみ。その予感はあるけど、深行との関係の変化も。それにしても表紙が可愛いなあ。