山崎ナオコーラ「お父さん大好き」(『手』文藝春秋収録)

「いたわり」という感覚が全ての人間に備わっているのは不思議だ。
 落ち込んでいるときには必ず、周りの人から励まされる。
 悩み事など決して相談しないような遠い相手から、急に優しくされるのだ。
 さんさんとふりそそぐ日光のように。  p.127

 自分のレゾン・デートルのために他人が必要なのだろうか。いや、違う。人間は、交情し合いたいだけなのだ。  p.150〜151