金原瑞人『翻訳のさじかげん』ポプラ社

 そして、古びないものなどなにもない。新しいものもやがて、ありふれたものになり、古いものになっていく。あらゆるものは時間がたてば古びる。もちろん古びても、なお次の時代に通用するものもある。しかし、そういったものが「本当に価値がある」ものであるかどうかもまた定かではない。そもそも、そのまた次の時代に通用するかどうかはわからない。というか、そういう絶対的な価値などおそらくないのだ。その時代、その社会、その人にとって価値を持つかどうか、それしかないのだと思うし、それでいいと思う。  p.128(「古びない言葉なんてない」より)