田山朔美「裏庭の穴」文藝春秋(『霊降ろし』収録)

「なにを埋めたの」
私は小さな声で聞いた。
「なにも埋めてないよ」
嘘だ、と私は思った。
「ねえ、なにを埋めたの」
母は私を見ずに言った。
「朝子、この夢は楽しい?」
「夢?」
「そう、ここは夢のなかだよ。朝になったら消えるんだよ」  p.9

「死んだように生きたって無意味なの。それじゃあ生きていても死んでいても同じ。ねえ、あなたはなんのために生きているの」  p.78