田山朔美「霊降ろし」文藝春秋(『霊降ろし』収録)
信じるかそれとも信じないか。結局のところ、差はそれだけなのかもしれない。だとしたら、私は信じたくない。信じてしまったら存在する。そうなったら、こちらの世界に引っかかりのすくない私は、あちらの世界に引きずり込まれて戻ってこられなくなる気がする。 p.126
フェンスと、その向こうの空を眺めた。境界線が、このフェンスみたいだったらいい。内側は安全、外に出れば危険。わかりやすい。それに向こうの様子も見れる。それだったら、悩む必要なんかないのに。 p.149
どちらが幻で、どちらが実体がある世界なのか。あちらとこちらの境界線上で揺らぐ主人公。引き留め繋ぐ明るい存在に救われる。