瀬川深『ミサキラヂオ』早川書房

 ――もう、仕方ないんじゃないかなあ。これだけ世の中の流れがゆっくりしちゃえばな。ちょっとぐらい時間がズレることだってあろうさ。  p.63  

 ――俺さ、時々、今生きているこの時間が切り取られて、ぽかんと歴史の中に宙ぶらりんで浮かんでいるような気分になるんだ。  p.65〜66

 ――あんがい神様は意地悪でね。なかなか、世界を解釈させてくれない。  p.172

どんなことであっても、モノを作り世界へと放つというのことなのだ。射た矢がどこまで届くのか分からないように、投げた石がどこに落ちるのか分からないように。  p.263

困惑するDJタキを農業青年は静かに諭す、循環を侮っちゃいけないよ、時間は循環しながら変化し続けるんだ、なんだってそうだ、春は必ず巡り来るけれど同じ春は二度と訪れないだろ?  p.346