2008-04-20から1日間の記事一覧

朱川湊人『スメラギの国』文藝春秋

突然、自分はとても幸福な人間だという思いが、体全体に満ち溢れた。なぜだか胸のあたりから、温かいものが湧き出てきて止まらない。 白い猫が、澄んだ声で短く鳴く。 「きれいだなぁ」 その声に応えるように、志郎もつぶやいた。 不思議な感覚だった。 まる…

朱川湊人『スメラギの国』文藝春秋

凍えた風に吹き散らされた無数の枯葉が、ザラザラとのたうつ音を立てながら、長い坂道を登ってくる。 p.3(プロローグ) 目の前には、長く緩やかな坂道が続いていた。 p.15