2008-09-26から1日間の記事一覧

翔田寛『誘拐児』

言ってみれば、あの終戦直後の滅茶苦茶な世の中では、すべての日本人―いや、この国で普通に生活していたあらゆる人間が、生きてゆくことだけで精一杯だったんだ」 「どんな人間でも、いつ何時、凶悪事件を起こしてもおかしくなかった、そういうことですね」 …

翔田寛『誘拐児』

昭和二十一年八月七日。 線路の向かい側に続くトタン屋根が、真夏の日差しを跳ね返していた。 p.5