2008-12-15から1日間の記事一覧

打海文三『覇者と覇者 歓喜、慙愧、紙吹雪』角川書店

「長い間ってどれくらいですか?」 「たとえばカイトが七十二歳。わたしは八十八歳」 里里菜の声の余韻に、海人は耳をかたむける。拒絶のひびきはない。だが事実上の拒絶だ。そうとしか解釈できない。海人はがっかりする。 「俺まだ二十二歳です」 「あと五…

打海文三『覇者と覇者 歓喜、慙愧、紙吹雪』角川書店 

戦争孤児が見る夢を、佐々木海人も見る。小さな家を建て、消息不明の母を捜し出して、妹と弟を呼びよせて四人で慎ましく暮らすという夢を。八歳のころから見つづけてきたささやかな夢だ。 p.8