2009-03-17から1日間の記事一覧

奥泉光『神器<上> 軍艦「橿原」殺人事件』新潮社

禍々しき死の影――言葉とはこれである。 p.18 観念では死に親しんでも、それはいまだリアルに俺に迫ってはいなかった。これはつまり、単純に、俺が生きているということだろう。 p.71 やや赤みのかかった蛍光灯の光に満たされた、天井の低い十畳間ほどの矩…

奥泉光『神器<上> 軍艦「橿原」殺人事件』新潮社

○九○○に俺たちは内火艇に乗り込んだ。桟橋に立っていたときから、寒くて仕方がなかったんだが、艇が飛沫をあげて走り出せば、剃刀に変じた風が頬に首に斬りつけ尚更寒い。 p.9