井上荒野「アナーキー」(『夜を着る』集英社 収録)

夜を着る

夜を着る

「これ、今日二度目ね」
 と彩が言う。
「今日は何でも二度目の日なのね」  p.23

痛みや、ほかの何かで朦朧としている頭の中で、奇妙にはっきり、でも、ここまで来てよかった、と思う。甚平の男に会えてよかった。こいつがいなければ、きっと彩を殴っていた。ここまで来てよかったんだ。  p.26〜27