フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』岩波少年文庫

あんたは幽霊だから、だれもきないようなへんな服をきて歩くのよ。庭園であんたが見えるのは、わたしひとりだわ。わたしには幽霊が見えるのよ。」  p.163

 トムは「過去」のことを考えていた。「時間」がそんなにも遠くへおしやってしまった「過去」のことを考えていた。「時間」はハティのこの「現在」をとらえて、それを「過去」にかえてしまった。しかしそれは、いまここで、ほんのつかのまのあいだではあるが、トムの「現在」に――トムとハティの「現在」になっている。――どんな方法でそうなったのかはわからないが。  p.223

 「トム。あんたがわたしぐらいの年になればね、むかしのなかに生きるようになるものさ。むかしを思いだし、むかしの夢をみてね。」  p.330