有川浩『別冊図書館戦争2』アスキー・メディアワークス

「すっご、負けず嫌いにも程があるっていうか!」
「昔の話だ、昔の!」
「それにしたって意外と後先考えないタイプですよね!」
「現在進行形で後先考える技能がないお前にそこまで爆笑される謂れはない!」  p.13(「もしもタイムマシンがあったら」)

 その子に何かちょっかい出したら、と前置いた小牧は極上の笑顔で言い放った。
「殺すよ?」  p.70(「昔の話を聞かせて」)

 個人の持っている本には代替は効かない。同じ本を買って返しても失われた本に籠っていた思い出は戻らない。ウサギinウサギと同じだ。  p.110(「昔の話を聞かせて」)

 手塚は郁の肩に手をかけて下がらせ、端的に一言だけ述べたのである。
「代わる」  p.185(「背中合わせの二人」(2))

「お前と仲がいい奴は、お前が有能だからお前を好きなんじゃないんだよ。お前がいい奴だから好きなんだよ」
「……素面でよく言うわ、そんなこと」
「素面で言わないと信じない奴に言われたくない」
 手塚の返しに頬が紅潮した。  p.212(「背中合わせの二人」(2))

「でも悔しかったー。たくさん泣いた。どうせ誰かに泣き顔さらさなきゃいけないならあんたがよかった」
(中略)
「……いいよ。あんたなら嫌じゃないみたいだわ、あたし」  p.257(「背中合わせの二人」(3))

「お前、知ってると思うけど敢えて言う。好きだ」  p.257(「背中合わせの二人」(3))

「あたしを大事にしてくれて、あたしが大事にしたいような人は、あたしのことなんか見つけてくれなかったっ!」
「俺が見つけた」
手塚が囁いた。
「自信家で皮肉屋で意固地で意地っ張りで大事にしたいお前のこと、やっと見つけた」
うわああ、と自分でもびっくりするほどの子供のような泣き声が漏れた。
「大事にして――大事にして大事にして大事にして!あたしもあんたのこと大事にしたい!」  p.259(「背中合わせの二人」(3))

「な、だから見つかるって言ったろ」
「うん」  p.260(「背中合わせの二人」(3))

「何よ、あんたが言ったんじゃない。あたしは素直になったら絶対幸せになれるって」
「言った、言ったけど……ちょっと速攻すぎないかあ!?」  p.261(「背中合わせの二人」(2))

 お互い、ずっと前から意識していた。それは知ってる。正面からはわざと向き合わないで、背中で互いの気配を探って。
 ようやく互いに振り向いた。互いが見つかって、互いに預けた。  p271(「背中合わせの二人」(3))