作家海外

ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー『リンゴの丘のベッツィー』徳間書店

けれどもベッツィーは、この先、何度も同じようにおどろくことになるのです。今生きている人たちも、長い時間の流れの中で昔とつながっているのだということを、ありありと感じるたびに……。 p.79 誕生日がこんなに心にのこるすてきな日になった子なんか、き…

ドロシー・キャンフィールド・フィッシャー『リンゴの丘のベッツィー』徳間書店

これは、ベッツィーという女の子のお話です。 ベッツィーは九歳で、正式な名前はエリザベス=アンといいました。 p.7

ドナ・ジョー・ナポリ『バウンド−纏足』あかね書房

今回のことはすべていんちきだ。いんちきはもうこりごり。皇太子さまは靴を使ってお妃を選ぼうとしている。でも、あの靴を履ける女の人はきっとたくさんいる。皇太子さまだってそのくらいは知っているはずだ。つまり、皇太子さまは本当は自分の好みにいちば…

ドナ・ジョー・ナポリ『バウンド−纏足』あかね書房

シンシンは泉のほとりでしゃがんでいた。無言で祈りを捧げている。 p.3

マイケル・カニンガム『星々の生まれるところ』集英社

死者は機械の中に戻って来る。かれらは人魚が海の底から船乗りに向かって歌うように、生ける者に誘いの歌をうたうのだ。 p.68(「機械の中」より) 一つの感覚が心の中に湧きあがった。血がふつふつと湧き立つような感じだ。一つの波、一つの風がやって来て…

ニール・ゲイマン『アメリカン・ゴッズ』下巻 角川書店

「あなたもわれわれの仲間です」ウェンズデイはいった。「忘れられていて、もう愛されてもいないし、思い出してももらえない。その点ではわれわれと同じだ。どちらの側につくべきかは明らかです」 p.32 小説を読むと、ほかの人間の頭のなかへ、ほかの場所へ…

ダニロ・キシュ「赤いレーニン切手」(『死者の百科事典』収録)東京創元社

過ぎたことは過ぎたこと。過去は私たちのうちに生きていて、消し去ることなどできません。 p.173 味わいが見事にバラバラの愛と死をテーマにした九つの物語が収録。元ネタが分かっていて読んだのがよりいっそう深く味わえるのだろうけど(作者自らによる作…

ダニロ・キシュ「王と愚者の書」(『死者の百科事典』収録)東京創元社

こうして、ルネッサンスの王子の教育のために書かれた一冊の参考書は――ジョリーの哲学的な輪廻を経てニルスの歪んだ鏡で屈折し――現代の独裁者の手引きとなるのだ。ニルスからの数例とその文章の歴史的な反射は、この文献の影響を物語っている。 p.157〜158

クリス・クラッチャー『ホエール・トーク』青山出版社

小学校で、肌の色の違いは、祖先が大昔にどこからやってきたかの違いにすぎないと知ったとき、こう思った。人種差別主義者ってのはよほどのばかか、劣等感のかたまりで、いつもだれかを見下してないと安心できないやつばっかりなんだ、と。自分にそういいき…

クリス・クラッチャー『ホエール・トーク』青山出版社

しばらく間を置いてから書くといい。じっくり思い出して、物語をみつけるんだ。 p.5

ドナ・ジョー・ナポリ『わたしの美しい娘』ポプラ社

このリュートは魅力的だ。ひとりの女が娘のために買い求め、それを娘がその娘に与え、それがそのまた娘に渡る。母がわたしにバイオリンをくれて、それをいつの日かわたしがツェルに与えるのと同じだ。このリュートは一家の歴史をつないでいく。わたしのバイ…

ドナ・ジョー・ナポリ『わたしの美しい娘』ポプラ社

「かあさん、またあのカモ、巣を温めてる」ツェルは窓から思いきり身を乗り出した。 p.10

フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』岩波少年文庫

あんたは幽霊だから、だれもきないようなへんな服をきて歩くのよ。庭園であんたが見えるのは、わたしひとりだわ。わたしには幽霊が見えるのよ。」 p.163 トムは「過去」のことを考えていた。「時間」がそんなにも遠くへおしやってしまった「過去」のことを…

フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』岩波少年文庫

裏の戸口のところにひとりで立っていたトムが、もし涙のながれるのをぬぐおうともしないでいたとすれば、それはくやし涙だった。 p.9

楊逸『時が滲む朝』文藝春秋

「学生さんよ、文学か何かわからんけど、若さだけで血が騒いでいるんじゃないか」 p.45 志強が泣いている。隣のその気配を感じつつも、志強の顔を見られない浩遠は、目をTシャツに据えた。英露の二文字が濡れて、次第に青いインクが溶け、浩遠の目に広がっ…

楊逸『時が滲む朝』文藝春秋

答案用紙を走るボールペンが一瞬止まった。 p.3

ミシェル・ペイヴァー『追放されしもの』評論社

トラクが目を覚ましたのに気づいてウルフがやってくると、まるで仲たがいなど一度もしたことがなかったかのように、陽気に鼻をなめあった。 [ごめんよ]トラクは、オオカミの言葉で言った。といっても、それは今トラクが感じていることの、ほんの一部でしかな…

ミシェル・ペイヴァー『追放されしもの』評論社

クサリヘビが一匹、川岸をするすると降りてきて、ぬめぬめ光る頭を水の上にのばした。トラクは、数歩手前で立ち止まり、ヘビが水を飲むのを見守ることにした。 p.5

ダレン・シャン『デモナータ6幕 悪魔の黙示録』小学館

おまえは、自分自身と、そのこぞうと、全世界を破滅させることになるのだぞ……ひとえに、あやまった愛情のために」 ロード・ロスは、うれしそうにため息をついた。 「おお、このような時があるからこそ、何千年もの長くてたいくつな時をすごす価値があるとい…

ダレン・シャン『デモナータ6幕 悪魔の黙示録』小学館

デモナータ 6幕 悪魔の黙示録作者: ダレンシャン,田口智子,Darren Shan,橋本恵出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/02/28メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (7件) を見る 巨大なサソリのすがたをした悪魔が、ひとりの女性の両目に毒針を…

ジョゼフ・ディレイニー『魔使いの秘密』東京創元社

まさかずっと泣いていた……?そう思ったら、自分が同じ立場だったらどうするか考えさせられてしまった。ぼくが魔使いで、アリスを穴に入れたとしたら?同じことをしていただろうか。 p.312 「違う!そんなふうになる必要なんてない。おまえには選ぶことがで…

ジョゼフ・ディレイニー『魔使いの秘密』東京創元社

魔使いの秘密 (sogen bookland)作者: ジョゼフディレイニー,佐竹美保,Delaney Joseph,金原瑞人,田中亜希子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/02/29メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (8件) を見る 寒くて暗い十一月の晩だった。 p…

フィリップ・リーヴ『ラークライト』理論社

必死だったから気持ちを集中できたんだと思います。もう一度やれっていわれてもぜったいにできません。だって、若い娘がこんなはしたない(はしたないに傍点)こと、とても……」 p.409 大博覧会が開催されんとしている黄金期の1851年のヴィクトリアン朝。錬…

フィリップ・リーヴ『ラークライト』理論社

ラークライト―伝説の宇宙海賊作者: フィリップリーヴ,Philip Reeve,David Wyatt,松山美保出版社/メーカー: 理論社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (7件) を見る 今から思えば、巨大蛾のポッターモスが目の前にあらわれた…

エリザベス・ボウエン「猫は跳ぶ」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

客のひとりミュリエル・バーカーは怪訝そうにテラスから建物を見上げながら言った。 「ねえ、あの人達、たまには思わないのかしら……私のいいたいことおわかりでしょう?」 p.88

エリザベス・ボウエン「猫は跳ぶ」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

ベントリィ殺人事件の後、ローズ・ヒルは二年間、空き家のままだった。 p.85

J・S・レ・ファニュ「マダム・クロウルの幽霊」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)作者: エリザベスボウエン,橋本槙矩出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1990/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (8件) を見る 奥さまは軸で回転するようにくるりとわたしの方を向くとにやりといたしました。 p.161…

SFサイード『バージャック』偕成社

…「たぶん、あんたってみた目ほどダメ猫じゃないのよね、バージャック。」 p.111 「人間は本物の猫より、おもちゃの猫が好きなのよ。世話をする必要がないもん。思いどおりになるし、あたしたちとちがって、いつだっていい子で、かわいいでしょ。」ホリーは…

SFサイード『バージャック』偕成社

バージャック―メソポタミアンブルーの影作者: S.F.サイード,田口智子,S.F. Said,金原瑞人,相山夏奏出版社/メーカー: 偕成社発売日: 2008/01/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る エルダー・ポーの昔語りがはじまった。 p.8

スーザン・プライス『オーディンとのろわれた語り部』

「ええと……まじないとは……ああ、言葉だ。まじないとは言葉で……」 「言葉だ!そうとも、まじないとは言葉だ、魔法とは言葉だ!力を持つように考えて選び、組み合わせた言葉なのだ。ネコよ、おまえが物語を語るときも、考えて言葉を選び、強い力を持たせようと…