2008-09-17から1日間の記事一覧

椰月美智子『体育座りで、空を見上げて』幻冬舎

見た目とはうらはらに、私の心は、徐々に波を打ちはじめていた。他人から見られる自分と自分の中の自分、ぜんぶ自分なんだけど、どれも違うような気がして、いつも気持ちがざわざわとしていた。 p.62(「一年三組」) 恋にはほんの少しだけ興味があったけど…

椰月美智子『体育座りで、空を見上げて』幻冬舎

小学校生活最後の学活の議題は「中学生になることへの不安」だった。 p.5

岡崎祥久『ctの深い川の町』講談社

「どうしてこの市に戻ってくるのか、ということについてだよ。いろんなものを手放してでも、戻ってきてこの市で暮らしたくなるのかもしれない」 「みんな、出て行きたくて出て行ったと思ってたのにね」 「どっちも本当なんだろ、出て行きたくなるのも、戻っ…

岡崎祥久『ctの深い川の町』講談社

これまでわたしの口から出てきた言葉の多くは弁明だったのだ――故郷へ向かう急行列車の中でわたしはそう思った。いや、言葉だけではない。わたしの為すこともまた弁明であった。 p.3

楊逸『時が滲む朝』文藝春秋

「学生さんよ、文学か何かわからんけど、若さだけで血が騒いでいるんじゃないか」 p.45 志強が泣いている。隣のその気配を感じつつも、志強の顔を見られない浩遠は、目をTシャツに据えた。英露の二文字が濡れて、次第に青いインクが溶け、浩遠の目に広がっ…

楊逸『時が滲む朝』文藝春秋

答案用紙を走るボールペンが一瞬止まった。 p.3