椰月美智子「七夕の夜」(『枝付き干し葡萄とワイングラス』収録 講談社)

 かなえはこの夜に、自分というものは自分でしかあり得ない、ということを悟った。たとえ自分で選択できなかったとしても、自分の気持ちだけは、他人に侵されないことを知った
 もちろん、そういうふうに意味付けできたのは、かなえがいろんなことを自分で選択できる年齢になってからだったが、それを確信し学んだのは、この夜だったと信じている。
 七夕様の願い事、やっぱり変えたい。かなえは心の中で、願い事を唱えた。  p.111