村田沙耶香「ギンイロノウタ」(『ギンイロノウタ』収録 新潮社)

 私が“化け物”だとして、それはある日突然そうなったのか。少しずつ変わっていったというならその変化はいつ、どのように始まったのか……考えれば考えるほど、脳は頭蓋骨から少しずつ体の内へと溶け出していき、その中を漂いながら、ぼやけた視界で必死に宙に手を彷徨わせる。  p.90