三崎亜記「同じ夜空を見上げて」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

 それは、決して手を伸ばすことのできない、幻の光だった。まるで、ありふれた日常というものが、ある日突然に、いともあっけなく消え去るのだということを思い知らせるように。  p.199

 ハッピーエンドでめでたしめでたしの明るいトーンの物語よりも、喪失の痛みや日常があっけなく崩壊してしまう危うさ脆さをまざまざと見せつける物悲しいトーンの物語のが印象に残った。『失われた町』は未読だけど、今まで読んだ三崎作品の中で、一番好きかもしれない。