小池昌代「女房」(『ことば汁』収録)中央公論新社

「人を殺すと、夜の森が見えるのね」
「違うだろ、夜の森を見たんだろ」
「見たというより見えたのでしょうよ。それは心象の風景じゃないの?自分の心が、そっくりそのまま、自分の外側に見えたんだわ。怖かったでしょうね、さびしかったでしょうね」  p.13