川上弘美「急降下するエレベーター」(『どこから行っても遠い町』新潮社より)

 山崎くんは、違わないひとなんだ。わたしは思っていた。山崎くんは、違わないひと。きっと山崎くんの家族も、違わないひとたち。わたしの家族も、そう。そして、わたし自身も。
 違っていた。佐羽は。南龍之介は、どうだったのか。ほんとうのところは、知らない。でも、少なくとも、佐羽と一緒にいる時の南龍之介は、違っていた。  p.186