川上弘美「どこから行っても遠い町」(『どこから行っても遠い町』新潮社より)
おれは、生きてきたというそのことだけで、つねに事を決めていたのだ。決定する、というわかりやすいところだけでなく、ただ誰かと知りあうだけで、ただ誰かとすれちがうだけで、ただそこにいるだけで、ただ息をするだけで。何かを決めつづけてきたのだ。
おれが決め、誰かが決め、女たちが決め、男たちが決め、この地球をとりまく幾千万もの因果が決め、そうやっておれはここにいるのだった。 p.264
おれは、生きてきたというそのことだけで、つねに事を決めていたのだ。決定する、というわかりやすいところだけでなく、ただ誰かと知りあうだけで、ただ誰かとすれちがうだけで、ただそこにいるだけで、ただ息をするだけで。何かを決めつづけてきたのだ。
おれが決め、誰かが決め、女たちが決め、男たちが決め、この地球をとりまく幾千万もの因果が決め、そうやっておれはここにいるのだった。 p.264