三崎亜記「蔵守」(『廃墟建築士』収録)
私はなぜ、守り続けるのだろう。
そのことに、疑念を持ってはならない。
それが、私の存在意義でもあるからだ。
疑念は心を乱し、動きを妨げる。
いつ、どんな形で訪れるかも知れぬ「その時」に、一片の迷いもなく自らの職務を遂行するために。私は守り続ける。 p.166
「行い自体に意味はないのかもしれない。だが受け継ぐこと、受け継がれてきたことを守り続けることに意味があることもあるかも知れないと思ってね」
「守り続けることに、意味がある……」 p.190
「フム……、蔵守として生まれ、蔵守としての職務を全うする、というわけか」
「はい」 p.202