辻村深月「ロードムービー」(『ロードムービー』講談社より)

「自分自身が何かされたわけじゃないのに、友達のために泣くんだ。それができるような人が、この中に何人いると思う?」  p.56

「俺、トシちゃんとどこまででも行きたいと思ってた。どんなこともできると思ってた。でもダメだ。俺は行かなくちゃいけない。もう、トシちゃんに守ってもらうわけにはいかないんだ」  p.105

 トシがワタルを守っていたんじゃない。最初から、トシはワタルに守られてきた。いつだってそうだった。だから、ワタルを助けたかった。どうにかしてやりたかった。  p.105

『トシちゃん、どこに行っても何になってもいいんだよ!』
 声を思い出す。
『どこに行っても、何になっても、俺は絶対に追いつくから。追っかけてくから』
 あんまり長く待ってるつもりはないから、早くしろよ。思ってトシは目を閉じる。  p.115