2009-02-24から1日間の記事一覧

辻村深月「雪の降る道」(『ロードムービー』講談社より)

自分の持っているもの全てを、ヒロの前に投げ出した。いつだって、そうだった。みーちゃんの宝物も笑い声も、いつだって彼女本人のためのものではなかった。そうすることで、彼女はヒロから悲しみだけを受け取った、ヒロの悲しみを漠然としか知らなかった彼…

辻村深月「道の先」(『ロードムービー』講談社より)

胸に、目の前のこの子の作り笑いと、笑った一瞬後ですぐ無表情に戻る、さっきの千晶の作り笑いとが同時によぎった。対照的な二つだが、この年頃の少女にとって、一体どっちが年相応の表情なのかはわからなかった。ただ、十四か十五の少女に強いられる作り笑…

辻村深月「ロードムービー」(『ロードムービー』講談社より)

「自分自身が何かされたわけじゃないのに、友達のために泣くんだ。それができるような人が、この中に何人いると思う?」 p.56 「俺、トシちゃんとどこまででも行きたいと思ってた。どんなこともできると思ってた。でもダメだ。俺は行かなくちゃいけない。も…