桐野夏生『女神記(ジョシンキ)』角川書店

 私の名はナミマ。遠い南の島で生まれ、たった十六歳の夜に死んだ巫女です。その私が、なぜ地下の死者の国に住まい、このような言葉を発する存在になったのかは、女神様の思し召しに他なりません。面妖なことではありますが、今の私には、生きている頃よりも生々しい感情があり、その感情によって生まれる言葉も、綾も、この身に備わっているのです。  p.5