2008-12-19から1日間の記事一覧

井上荒野「骨」(『あなたの獣』収録 角川書店)

「女の子にもてたかったら、謎の男になるといいわよ。女って、セックスすれば謎が解けると思っちゃうから」 p.208

井上荒野「声」(『あなたの獣』収録 角川書店)

絶望したのよ、あなたには……。 眠れない夜、耳に響くときと同じように――蛍みたいに僕を囲んでふわふわと浮かび、そのせいで眠れないのだと最初は考えているが、やがて子守歌さながらに、それらこそが僕を眠らせるものとなる――、どの女の声もやさしげだった。…

井上荒野「石」(『あなたの獣』収録 角川書店)

「あなたは、いつも、どこにもいなかった。私が本当に許せなかったのはそのことなのよ。食事をしていても、子供を抱いていても、私の足の爪を切ってくれるときだって、あなたはいなかった。もうずっと前から、気がついていたわ。あなた、私が気がついている…

井上荒野「砂」(『あなたの獣』収録 角川書店)

僕には、少女たちはこの場所に似合っているように感じられた。彼女たちは、この場所の、何かを嵌め込んでみてみてはじめてあきらかになる欠落のような部分に、一人一人がぴったり嵌まり込んでいるような感じがしたのだ。 p.13