2009-01-05から1日間の記事一覧

宮木あや子「群青」(『群青』小学館 より)

「そりゃ、骨折なんかと違って、心の傷ってのは簡単には治らないさ。もしかしたら、一生そのまんまかもしれない。それでも、皆なんとかだましだまし、生きてるんだよ。そういう痛みとか苦しみとか、そういうもん、体の奥のまた奥のほうに隠してさ」 「……」 …

近藤史恵「寒椿ゆれる」(『寒椿ゆれる』光文社より)

「だから、まあ、つまりはうまく納まったということだ」 p.278

近藤史恵「清姫」(『寒椿ゆれる』光文社より)

千蔭は、しばらくぽかんとしていた。何を言われたのか、すぐにはわからないようだ。 千蔭の額から汗が噴き出した。あわてて、手ぬぐいで拭っている。 p.161 「ろくには色だの恋だのというものはわかりませぬ」 おろくは、巴之丞にも言ったことばを、もう一…

近藤史恵「猪鍋」(『寒椿ゆれる』光文社より)

「あんたは馬鹿だねえ」 「馬鹿とはなんだ」 「女には、女の意地ってもんがあるんだよ。惚れているからこそ、その相手に良縁があれば、ごねてみっともないところを見せたくないんじゃないか。家柄だけで鼻持ちならない相手というのなら、まだ負けたくない気…