2009-01-25から1日間の記事一覧

津村記久子「地下鉄の叙事詩」(『アレグリアとは仕事はできない』収録 筑摩書房)

何か、保存しておかなければいけないエネルギーを、通勤の作法に使ってしまったような気分になる。 p.137 電車は暴力を乗せて走っている、とミカミはときどき思う。自動車のような、ある種能動的な暴力ではなく、胃の中に釘を溜め込むように怒りを充満させ…

津村記久子「アレグリアとは仕事はできない」(『アレグリアとは仕事はできない』収録 筑摩書房)

こいつにどうにかして思い知らせてやりたい、と考える。人ならば可能だ。人ならば。 p.11 始末に負えないのは、悪意よりも扱いにくい。痛みにまで達するようなアレグリアによる信頼の裏切りへの悲嘆がミノベの中にあることだ。 p.12 ミノベに言わせると、…

津村記久子「アレグリアとは仕事はできない」(『アレグリアとは仕事はできない』収録 筑摩書房)

万物には魂が宿る。ミノベの信仰にはそうある。万物に魂は宿る。母体の下の口から、あるいは殻を破り、あるいは分裂し、あるいは型を抜かれ、あるいは袋に詰められ、あるいはネジをとめられ、あるいはネジと一緒に梱包され、万物の命は生まれる。そこに魂は…