2009-05-12から1日間の記事一覧

白岩玄『空に唄う』河出書房新社

――熱いとか痛いとか感じないとさ、自分が平坦になっていくような気がするの。 p.104 碕沢さんはぬくもりを確かめるように僕の脚に数秒さわると、なにやら神妙な顔をして、静かに手をもとに戻した。 ――うん。つながってる、って感じ。 p.105 ――なんか、私が…

白岩玄『空に唄う』河出書房新社

天井の染みがななめ左を指している。 p.3

津島佑子「サヨヒメ」(『電気馬』新潮社 収録)

そう。その通り。だれよりもなによりも大切な子どもをいけにえにして、なにかの神に捧げ、このひとりの女はこれから先も生きつづけようとしている。でも、その女もいつかまた、なにかの神のいけにえにされていく。なんの神なのか。時の神。希望の神。女だけ…

津島佑子「雪少女」(『電気馬』新潮社 収録)

冬の雪から生まれる雪女はただなんとなく、人間が恋しくて、人間のそばに近づきたくて、雪の夜、自分に語りかけてくる人間を求めて、さまよいつづけるだけ。 p.17

津島佑子「雪少女」(『電気馬』新潮社 収録)

雪女は、当り前の話だけれど、雪がなければ生まれることができない。それもたっぷりの雪が必要なのだ。 p.16