2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧

本谷有希子『グ、ア、ム』新潮社

窓際に座った長女は、ぼんやりとまた風土と、その土地柄に染み付く人間の性質について考えてみた。特に答えは出なかったが、こうして女三人一緒に行動してみて、いやが上にも実感する。自分たちがどんなに抗ったとしても、結局は北陸の女でしかないだろうと…

本谷有希子『グ、ア、ム』新潮社

北陸の天気は基本的に曇天。 p.3

魚住直子「囚われ人」(『ピンクの神様』講談社収録)

小さな世界で生きている人の悩みを、軽蔑する人がいる。もっと大きな世界で体を張って生きていると自負してる者たちだ。その者たちは、閉じられた小さな世界に住む者の悩みなんて、とるにたりないことだと信じている。 でも、と典子は思う。そういう人達だっ…

絲山秋子『ラジ&ピース』講談社

逃げ場を探す必要はなかった。自分が人と違うことがこんなに気持ちがいいと思える瞬間があった。 p.49 「世の中には、狂人と変態以外いません」 p.78 ラジオは発信されるものではなかった。人が集まるところにたまたま野枝がいる、そういうことなのだと野…

絲山秋子『ラジ&ピース』講談社

醜いのは野枝自身だった。いつも自分のことばかり考えていた。パーツが小さい地味な顔、寸胴で足の短い体型、身長が低いこと、冒険が怖くて無地の同系色しか合わせられない服装のセンス。性格はといえば彼女はいつも機嫌が悪かった。そしてそれが露骨に表に…