作家さ行
そのドアを押して私は中へ入った。 p.5
封筒にも入っていなくて、ただのルーズリーフにたった四行、黒いボールペンで書かれていた。でも、十分俺を勇気づけた。 ちきしょう。岡野、めっちゃかわいいやん。 ちきしょう。兄貴、やっぱ俺の何倍も賢いやん。 p.263 「人生に疲れてへんの?」 「うーん…
ラブレターを代筆するという話はよくある。 p.4
絵莉はその場面が好きで、そこばかり何回も読んだ。恋が始まったときも、終わったときも、読んだ。それで、先週もまた読み返した。 今、目の前で、心がすうっと外へ広がっていくように感じられるほど美しい青色が、自分のせいだったらいいのに。隣にあるミネ…
「そうか。三十の倍やったら、けっこう最近のことやん」 p.160
女の子を見るのが好きなのは、男性俳優やジャニーズ事務所の誰彼が好きだというのと同じことなのか違うことなのか、と実加はときどき思う。ほかにもかわいい女の子が好きだという話をする女友達はいるけれど、同性愛というわけでもなく、小田ちゃんは結婚す…
主題歌作者: 柴崎友香出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/03/04メディア: 単行本 クリック: 20回この商品を含むブログ (61件) を見る 会社に来るまでに携帯プレイヤーで聞いていた音楽が、実加の頭の中で鳴り続けていた。 p.7
目を閉じて測量男が現れてから帰るまでを通しで頭の中で繰り返した。リカのことをパワー系だ、と測量男は言った。パワー系。 p.33 リカは「パワー系個人クラブ・リカのお部屋」と紙に書いてみた。お部屋?なんかこれが性的サービスを連想させるな、良くない…
パワー系181作者: 墨谷渉出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/01/05メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (9件) を見る 女は五階と二階とを既に三回往復していた。 p.7
マサイにふりかかる災いのすべてを、呪われた名の娘ひとりに背負わせて、氏族すべてを守ろうとしたのだ。 p.190 赤いたてがみのライオンをさがすため、たったひとり旅に出た大シバ。 大シバは、どんなに疎まれても、兄レムヤのことや、村の衆のことも大事に…
燃えるサバンナ (ミステリーYA!)作者: 澤見彰出版社/メーカー: 理論社発売日: 2008/02/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 大気がゆらめいている。 p.4(プロローグより) マサイの赤。 火の赤。太陽の熱と光の赤。それは…
「今はさ、ロマンがないよね」 自分の鞄から文庫本を取り出して、隼人くんはため息をついて。中学生らしからぬ台詞に、僕はつい苦笑してしまう。 「本の中では、犯罪にも理由やロマンがある。正義を守る人もいれば、スケールの大きな悪をもくろむ犯人もいる…
先生と僕作者: 坂木司出版社/メーカー: 双葉社発売日: 2007/12メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (57件) を見る 一歩進むたびに、チラシを手渡される。そして立ち止まるたびに、声をかけられる。 p.9(「一話 先生と僕」より)
星新一 空想工房へようこそ (とんぼの本)作者: 最相葉月出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/11/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (26件) を見る 「江坂さん。ショートショートは、作者は消えてなくなっても、不思議な余韻を残す民話…