作家ま行

三崎亜記「突起型選択装置」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

「今日、二人組の男が会社にやって来たよ。君のボタンを押すなって、忠告に来たみたいだ」 彼女は下を向いたまま、わかってる、というように頷く。 「君の背中にあるのは、何のためのボタンなんだ?押したら、いったいどうなるんだ」 p.115

三崎亜記「彼女の痕跡展」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

我々が過去を語る上で拠り所とする、自らの「記憶」とは、果たして本当に確かな「過去の蓄積」なのだろうか、と。 p.30 底の知れぬ深い、深い穴のほとりに立って、私の記憶が次々に放り込まれてゆく姿を想像する。 その記憶の穴の奥底には、私の失われた恋…

三崎亜記「鼓笛隊の襲来」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

「ええ。でも、お義母さんの唄、覚えておきたくって。いつかまた、鼓笛隊が来たときのために」 「そうかい……。そうだね、あんたが受け継いでくれるんだね」 p.20 台風じゃなくて鼓笛隊が上陸してくる世界なんて!なんて奇抜!鼓笛隊の襲来がとある家族にも…

三崎亜記「鼓笛隊の襲来」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

赤道上に、戦後最大規模の鼓笛隊が発生した。 p.7

前田珠子『緑の糸をたどって』コバルト文庫

「みてくれがどうであろうとも、ドレスで木に登るのを止めない時点で、猿娘は猿娘です」 p.147 感想はコチラ。

前田珠子『緑の糸をたどって』コバルト文庫

緑の糸をたどって―天を支える者 (コバルト文庫)作者: 前田珠子,明咲トウル出版社/メーカー: 集英社発売日: 2008/04/01メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る 視界の隅で、手入れされた細く優美な指がすい、と宙を舞う。 p.8

道尾秀介『ラットマン』光文社

「この文脈効果に、命名効果ってのが重なると、幽霊はよりはっきりとしたかたちを持ってくる」 「命名効果ってのは?」 谷尾が真剣な顔を向ける。こうしたところ、彼はまったく屈託というものがない。 「たとえばこの絵で言うと、ラットマンだけを単独で見た…

道尾秀介『ラットマン』光文社

ラットマン作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/01/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 76回この商品を含むブログ (142件) を見る 「――で?」 iPodのイヤホンを左右の耳から抜き取り、姫川亮は顔を上げた。 p.13 感想はこちら。

村上春樹『ふしぎな図書館』講談社文庫

「そんなにがっかりしないで」と羊男がなぐさめるように言った。「今ごはんを持ってきてあげるよ。ほら、あったかいごはんを食べれば、また元気になるからさ」 10章のはじめ <良い月です>と少女はくりかえした。<新月が私たちの運命をかえてくれます> 17…

村上春樹『ふしぎな図書館』講談社文庫

ふしぎな図書館 (講談社文庫)作者: 村上春樹,佐々木マキ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/01/16メディア: 文庫 クリック: 21回この商品を含むブログ (45件) を見る 図書館はいつもよりずっと、しんとしていた。 感想はコチラ。

皆川博子『聖女の島』講談社ノベルス

助けてください。あなたの助けが必要です。助けてください。 p.173

皆川博子『聖女の島』講談社ノベルス

聖女の島 綾辻・有栖川復刊セレクション (講談社ノベルス)作者: 皆川博子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/10/05メディア: 新書 クリック: 7回この商品を含むブログ (19件) を見る 暖かい陽射しを浴びて、めざめた。 p.7 (プロローグ) 夕陽を背後から…

松浦理英子『犬身』朝日新聞社

「その通りよ。こういうわたしにセクシュアリティというものがあるとしたら、それはホモセクシュアルでもヘテロセクシュアルでもない、これは今自分でつくったことばだけど、ドッグセクシュアルとでも言うべきなんじゃないかと思う。好きな人間に犬を可愛が…

松浦理英子『犬身』朝日新聞社

犬身作者: 松浦理英子出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2007/10/05メディア: 単行本 クリック: 33回この商品を含むブログ (108件) を見る 遠くで犬の啼き声がした。 p.5 簡単な感想はコチラ。

松浦理英子「乾く夏」(『葬儀の日』収録)河出文庫文藝コレクション

「クラスに愚鈍な子がいてね。私に向かって盛んに、ドストエフスキイは面白いよ、と言うの。まるでドストエフスキイが自分の専売特許みたいに。教えてくれてどうもありがとう、って皮肉を言っても通じないの。重ねて言ってやったわ、今度は私の知らないこと…

松浦理英子「乾く夏」(『葬儀の日』収録)河出文庫文藝コレクション

葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)作者: 松浦理英子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 1993/01/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (35件) を見る 窓べりに上って来た猫を彩子が払い落とした。 p.75