2008-03-01から1ヶ月間の記事一覧

恩田陸『猫と針』新潮社

猫と針作者: 恩田陸出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 13回この商品を含むブログ (46件) を見る 私たちは新宿で飲んでいた。 p.4(『猫と針』口上 より) 真っ暗な舞台、パッと明かりがつくと、サトウとタナカ、スズキとタ…

岸田るり子『過去からの手紙』理論社

芸術の才能、そんなおぞましい血を父から受け継いでいるとしたら、わたしもあの炎みたいに誰かを焼き殺そうとするかもしれない。 その罪深い創造への渇望を、料理という安全な形で満たしてくれるのが<マテリアルクッキング>なのだ。だから、このクラブはわ…

岸田るり子『過去からの手紙』理論社

過去からの手紙 (ミステリーYA!)作者: 岸田るり子出版社/メーカー: 理論社発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る その日、僕が一週間ぶりに帰宅してみると、いろいろなことが、いつもと違っていた。 p.4 感想は…

山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』

「あれも見てください。あれ、影」 上から灯りで照らされて地面に花の影が落ちていた。風が吹くと淡々と揺れる。 「影の桜もきれいですね」 p.17 …もっと話したいな、二人でもっと話してみたい。エリもきっとそう思っている。そんな気がする。そう思った途…

山崎ナオコーラ『カツラ美容室別室』

カツラ美容室別室作者: 山崎ナオコーラ出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2007/12/07メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 28回この商品を含むブログ (93件) を見る 「桂美容室別室」の店長、桂孝蔵は、他人の髪の毛を懸命にカットしているが、自分自身…

澤見彰『燃えるサバンナ』

マサイにふりかかる災いのすべてを、呪われた名の娘ひとりに背負わせて、氏族すべてを守ろうとしたのだ。 p.190 赤いたてがみのライオンをさがすため、たったひとり旅に出た大シバ。 大シバは、どんなに疎まれても、兄レムヤのことや、村の衆のことも大事に…

澤見彰『燃えるサバンナ』

燃えるサバンナ (ミステリーYA!)作者: 澤見彰出版社/メーカー: 理論社発売日: 2008/02/01メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (7件) を見る 大気がゆらめいている。 p.4(プロローグより) マサイの赤。 火の赤。太陽の熱と光の赤。それは…

川端裕人『エピデミック』

現代の生活において、人々は生き物を意識から排除しすぎる。実際のところ、この世は「人間以外」の生き物に満ちている。都市では、そこから目をそらして生活するシステムが出来上がっているだけのことだ。獣医師であり、また、一時は動物園への就職も考えた…

エリザベス・ボウエン「猫は跳ぶ」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

客のひとりミュリエル・バーカーは怪訝そうにテラスから建物を見上げながら言った。 「ねえ、あの人達、たまには思わないのかしら……私のいいたいことおわかりでしょう?」 p.88

エリザベス・ボウエン「猫は跳ぶ」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

ベントリィ殺人事件の後、ローズ・ヒルは二年間、空き家のままだった。 p.85

J・S・レ・ファニュ「マダム・クロウルの幽霊」(『猫は跳ぶ』福武文庫 収録)

猫は跳ぶ―イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)作者: エリザベスボウエン,橋本槙矩出版社/メーカー: 福武書店発売日: 1990/07メディア: 文庫この商品を含むブログ (8件) を見る 奥さまは軸で回転するようにくるりとわたしの方を向くとにやりといたしました。 p.161…

津村記久子「花婿のハムラビ法典」(『カソウスキの行方』講談社 収録)

そこでハルオは決意したのだった。サトミの不義理と自分の不義理の回数を合致させようと。そこまではいかなくとも、せめて月間平均不義理回数を、三ポイント差までには縮めようと。 p.133

津村記久子「カソウスキの行方」(『カソウスキの行方』講談社 収録)

よくしてもらってるのに打ち解けられないのが不甲斐なかったし、打ち解けさせない森川にも理不尽な怒りを感じた。わたしはこの人のことがやっぱり嫌いなんだろうかと思い、好き嫌いで推し量ったことなどなかったのに気付く。 p.31 「消去法かあ」 森川君か…

津村記久子「カソウスキの行方」(『カソウスキの行方』講談社 収録)

カソウスキの行方作者: 津村記久子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/02/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 50回この商品を含むブログ (75件) を見る 新製品に目移りする。 p.7 感想はコチラ。

粕谷知世『ひなのころ』

母をはねつけてしまいたい苛立ちと、母の胸に顔を埋めて思いきり泣きたい気持ちに引き裂かれて、動くことも喋ることもできない。 母の腕の下から黒いダッシュボードを睨みつけているうちに、おてんの祭りの夜に覗き見た井戸のことが思い出された。 暗い井戸…

SFサイード『バージャック』偕成社

…「たぶん、あんたってみた目ほどダメ猫じゃないのよね、バージャック。」 p.111 「人間は本物の猫より、おもちゃの猫が好きなのよ。世話をする必要がないもん。思いどおりになるし、あたしたちとちがって、いつだっていい子で、かわいいでしょ。」ホリーは…

粕谷知世『ひなのころ』中央公論新社

ひなのころ作者: 粕谷知世出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2006/04メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (28件) を見る 国道を横切って小さな橋を渡ってしまえば、あとは田端の一本道を進むだけだ。 (まえがきより) 春とは言いながら…

SFサイード『バージャック』偕成社

バージャック―メソポタミアンブルーの影作者: S.F.サイード,田口智子,S.F. Said,金原瑞人,相山夏奏出版社/メーカー: 偕成社発売日: 2008/01/10メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る エルダー・ポーの昔語りがはじまった。 p.8

鯨統一郎『浦島太郎の真相』光文社カッパノベルス

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパノベルス)作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/05/19メディア: 新書 クリック: 16回この商品を含むブログ (34件) を見る そう言うと東子さんはグラスを静かに飲み乾した。あとには空になった一升瓶…

紺野キリフキ『ツクツク図書館』メディアファクトリー

「なんなんです、ここは!」 「図書館ですよ」 p.84 「鼻を利かせるんだ。つまらない本の匂いを感じるんだ」 本好きはよく「おもしろい本は手に取ったときにわかる」と言う。運び屋の技術はそれを逆方向にぐんと伸ばしたものだ。彼らはわざわざ手に取ること…

紺野キリフキ『ツクツク図書館』メディアファクトリー

ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)作者: 紺野キリフキ出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (25件) を見る 「ここ、図書館ですか?」 「ええ」 「よかった」 p.1

芦原すなお『ユングフラウ』東京創元社

どいつもこいつも、……そして、わたしも……。 p.284 「つまりですね、あとになって悩むのはいつだって女だってことです」 「ずいぶん古臭いこと言うわね」 「女はいつの時代も同じですよ」 さよりがもっともらしいことを言う。しかし、さよりちゃん、少なくと…

芦原すなお『ユングフラウ』東京創元社

ユングフラウ作者: 芦原すなお出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (8件) を見る 「ほんとにこっちでいいの?」翠はきいた。 p.4