作品あ行

飛鳥部勝則『ヴェロニカの鍵』文藝春秋

「密室トリックということですね」 「推理小説のファンですか」 「いえ、マンガとアニメでしか知りません」 p.128 「人の死をもっと厳粛に受け止めなくていいのか」 彼女はあっさりといった。 「いいんじゃないですか。人の死なんて」 p.129

飛鳥部勝則『ヴェロニカの鍵』文藝春秋

ヴェロニカ。 あなたのことをそう呼びたいと思う。 p.7 今夜も徹夜になるだろう。 p.10

山崎ナオコーラ「秋葉原」(『論理と感性は相反しない』講談社より)

ボルヘスと神田川は、いつも対極にいる。ひとりが旅行へ出れば、もうひとりはその反対側へ用事ができる。二人が出会うことは、永遠にない。 p.129 アンチポデス。

三崎亜記「同じ夜空を見上げて」(『鼓笛隊の襲来』光文社 より)

それは、決して手を伸ばすことのできない、幻の光だった。まるで、ありふれた日常というものが、ある日突然に、いともあっけなく消え去るのだということを思い知らせるように。 p.199 ハッピーエンドでめでたしめでたしの明るいトーンの物語よりも、喪失の…

佐藤正午『アンダーリポート』集英社

「血のめぐりの悪い男ね、相変わらず。あたしがそれを認めれば、認めたとたんに、あなたの身に危険がおよぶかもしれない。そんなことは考えてもみない?さっきあなたは、この物語は自分の人生とも関係があると言った。でもそれは言葉のうわっつらだけ。本当…

佐藤正午『アンダーリポート』集英社

そのドアを押して私は中へ入った。 p.5

梶尾真治『あねのねちゃん』新潮社

「大丈夫って訊ねたら、大丈夫じゃないって玲香ちゃんは答えなきゃなんないのよ。だって大丈夫じゃないから、私が現れたんだから。玲香ちゃんを大丈夫にするために現れたんだから」 p.20

梶尾真治『あねのねちゃん』新潮社

あねのねちゃん作者: 梶尾真治出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/12メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (18件) を見る あねのねちゃんの名前は、玲香がつけた名前なのか、それともあねのねちゃんが自分で名乗った名前なのかは、おぼえて…

石持浅海『温かな手』東京創元社

二十数年生きてきて、まさか自分が人間以外のものと関わり合いになるとは、思ってもみなかった。 p.10(「白衣の意匠」より) でも北西の手は温かかった。それは、人間としての確かなぬくもりだった。 わたしは、その温かさを強く握りしめた。 p.234( 「…

円城塔「つぎの著者につづく」(『オブ・ザ・ベースボール』文藝春秋刊より)

「ベコス。 こうして私たち二人は話しはじめる。 p.83

円城塔「オブ・ザ・ベースボール」(『オブ・ザ・ベースボール』文藝春秋刊より)

手札にエースが四枚。誰だってこれは負けないと思う。 p.7

井上荒野「I島の思い出」(『夜を着る』集英社 収録)

「あの人はよくないわよ」 母は言った。 「そうかな」 「そう。奥さんがいるからとかそういうんじゃないわよ。なんかねえ、電話で喋った感じが、だめだった」 「そう?」 「そうよ」

井上荒野「映画的な子供」(『夜を着る』集英社 収録)

ただ、両親が「映画的」と口にするとき、彼らがほしいのは映画的な子供なのだ、ということが伝わってくる。つまり、自分がちっとも映画的な子供じゃないらしいことが。 p.39〜40

井上荒野「アナーキー」(『夜を着る』集英社 収録)

夜を着る作者: 井上荒野出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/02/18メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (22件) を見る 「これ、今日二度目ね」 と彩が言う。 「今日は何でも二度目の日なのね」 p.23 痛みや、ほかの何かで朦朧…

川端裕人『エピデミック』

現代の生活において、人々は生き物を意識から排除しすぎる。実際のところ、この世は「人間以外」の生き物に満ちている。都市では、そこから目をそらして生活するシステムが出来上がっているだけのことだ。獣医師であり、また、一時は動物園への就職も考えた…

鯨統一郎『浦島太郎の真相』光文社カッパノベルス

浦島太郎の真相 恐ろしい八つの昔話 (カッパノベルス)作者: 鯨統一郎出版社/メーカー: 光文社発売日: 2007/05/19メディア: 新書 クリック: 16回この商品を含むブログ (34件) を見る そう言うと東子さんはグラスを静かに飲み乾した。あとには空になった一升瓶…

川端裕人『エピデミック』

エピデミック作者: 川端裕人出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2007/12メディア: 単行本 クリック: 28回この商品を含むブログ (42件) を見る 男は三年前からT市に住んでいる。 (p.4) 診察室に新しい患者が入ってくるたびに、かすかな潮の匂いが運ばれてく…

スーザン・プライス『オーディンとのろわれた語り部』

「ええと……まじないとは……ああ、言葉だ。まじないとは言葉で……」 「言葉だ!そうとも、まじないとは言葉だ、魔法とは言葉だ!力を持つように考えて選び、組み合わせた言葉なのだ。ネコよ、おまえが物語を語るときも、考えて言葉を選び、強い力を持たせようと…

スーザン・プライス『オーディンとのろわれた語り部』徳間書店

オーディンとのろわれた語り部作者: スーザンプライス,パトリック・リンチ,Susan Price,当麻ゆか出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 1997/07メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る オーディンは死と、詩と恐ろしい魔法とをつかさ…

パトリシア・A・マキリップ『オドの魔法学校』

「方法を見つけてくれ」くちびるだけで言う。交わされた言葉が、魔法使いであろうと、壁から視線をそそいでいる顔であろうと、なにものにも聴かれることのないように。ミストラルは答えなかった。ただ、これからおこなう術のため、心のなかにその糸を加えた…

パトリシア・A・マキリップ『オドの魔法学校』

オドの魔法学校 (創元推理文庫)作者: パトリシア・A.マキリップ,Patricia A. Mckillip,原島文世出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/02メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (24件) を見る ブレンダン・ヴェッチは、靴屋の靴の下にオド魔…

津原泰水『ルピナス探偵団の憂愁』東京創元社

(略)…しかし祀島、考えてみてほしい。映画の続篇というのはほとんどが駄作でしょう、なぜか。前作の成功ぶりを崇めたたてまつる製作者たちが、その再現を天命のように感じてしまうからです。なぜ続篇が必要なのか、いかなる続篇ならば有意義か、そういった…

山本弘『MM9』東京創元社

MM9作者: 山本弘出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 64回この商品を含むブログ (91件) を見る 横浜・石川町駅―― 携帯電話が鳴ったのは午後六時五三分だった。 p.7