作家た行
「中村青司か?」 「誰ですか、それは?」 p.17 綾鹿市出身で引退した元財界人日暮百人が、鳥搗島に日暮美術館という建物を建てた。”現代アートは制作過程そのものが芸術行為”という主張に基づき、招聘された6人の若手アーティストたち。芸術作品が完成しお…
日頃は注目したことのない納豆コーナーで、その種類の豊富さにわたしは目をみはった。ヨーグルトはプレーンといちご味しか置いていないというのに、こちらは十五種類ほどもある。陣取っている棚の幅も段違いで、あらためてこの町での納豆以外の発酵食品の不…
わたしは毎日、七時五十五分のバスに乗る。 p.1
緩んじゃったんじゃないのという母の言葉を雨の音と合せずっと忘れないでおこうと決めた。 p.87 戸がぎいーと鳴って子どもたちが庭へ入ってきた時に間違って切り落したのは一つだけではなかったか。廊下へ出る前に自分が全て切ったのか。蕾を拾い集めた。桜…
「あたしたちさ、もう酷いことされてんだよ?いいじゃん。井川、何されても文句言えないくらいのこと、したよ。アンタさっき泣いたじゃん!人のこと泣かせるような女、黙ってのさばらせといていいの?」 p.203 私たちはすがり合って、もたれ合って、生きて…
階段を上がってすぐ左手の、表に面した小部屋に入ると、本箱のうしろから白い顔のフクロウが半分だけ顔を出しておれを見ている。 p.4 「ひとつの解答として、君が見たのは君自身の夢であって、今もまだその夢から醒めていないということも言えるよ」彼は微…
「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」浴衣姿の妹がおれの書斎に入ってきて言った。 p.3
何げなく周囲を見回せば、そこには膨大な書物がわたしを取り囲んでいた。そうと気づいて歩き始めてみたら、いつもの図書館がまったく別の場所みたいだ。 『牛はなぜ草からミルクをつくるのか』 断然面白そうなのを見つけた。手にとって眺め、小さく息をつい…
近頃、わたしはいけてない。 p.5
「だからね、ふぅちゃん。三十怖い病は二十代にかかるはしかみたいなもんで、三十前になるとあせりまくるけど、心配することはないんだよ。三十過ぎてからだって、なんとかなるんだから。ね。ましてや、二十五が結婚適齢期のリミットだったのは昔話だ。おバ…
その昔、二十五歳は女の分岐点だった。 p.5(「1 三十怖い病」より)
「ビールってさ、びっくりするぐらいまずいねえ」 「うん。まずい」 p.17(第一回ビール祭 十二歳・秘密基地) 「だから、俺は決めた。俺は先祖ができなかったことをやってやる。――修行の旅で腕を磨いて、いつか新山でビールを造るんだ」 p.159(第七回ビ…
ビールボーイズ作者: 竹内真出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (9件) を見る ちょっと想像してみてください。 (p.4) 第一回ビール祭は一九八三年に開催された。 p.8
でもね。今は、こう思う。しょせん、人間はみんな、出来心で生きている。だから、トラブルとアクシデントの絶え間がないのだ。そうでしょう?些細なことでも、端から勝手にこんがらがっちゃう。そんなつもりじゃなかったのに。こんなはずじゃなかったのに。 …
セ・シ・ボン作者: 平安寿子出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (18件) を見る 「女の黄金時代は、なんといっても三十代ね。二十代はまだまだ子供。人の言葉に左右されて、自分てものがつかめない…
心の底に波紋が広がった。心を震わせる悲しい和音。まるで音叉のように、俺と彼女の感情が共鳴する。 それは孤独。大切なものをなくした悲しみ。 「そうか」 彼女は手を回し、ぎゅっと俺を抱きしめた。 「お前も、そうだったのか」 p.85〜86 「人は誰であれ…
“本の姫”は謳う〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)作者: 多崎礼,山本ヤマト出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/03/01メディア: 新書購入: 3人 クリック: 26回この商品を含むブログ (48件) を見る 夜の街をセラは歩いていく。 p.9
そこでハルオは決意したのだった。サトミの不義理と自分の不義理の回数を合致させようと。そこまではいかなくとも、せめて月間平均不義理回数を、三ポイント差までには縮めようと。 p.133
よくしてもらってるのに打ち解けられないのが不甲斐なかったし、打ち解けさせない森川にも理不尽な怒りを感じた。わたしはこの人のことがやっぱり嫌いなんだろうかと思い、好き嫌いで推し量ったことなどなかったのに気付く。 p.31 「消去法かあ」 森川君か…
カソウスキの行方作者: 津村記久子出版社/メーカー: 講談社発売日: 2008/02/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 50回この商品を含むブログ (75件) を見る 新製品に目移りする。 p.7 感想はコチラ。
…ワンダーの尻尾の動きも止まり、その視線は遠くの尾根に向けられた。 周囲に遮るものがない山頂には、それまでの山道とは全く別の景色がある。ワンダーはそれを悟っているのかいないのか、地面に下ろされるとしきりに周りの匂いを嗅ぎ始めた。うろうろと歩…
街角のオジギビト作者: とりみき出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2007/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 35回この商品を含むブログ (45件) を見る オジギビトとはなにか。 p.8
くびれというよりも その胴の長さが 大人っぽいなぁ〜と 思うのだ。 なんか「成長しきった 大人の女性―」 という感じがする。 p.66 胸からおへそ までがあんなに 遠いなんて 信じられない… 胴の長さがちがえば その中の内臓の構造も ちがってくるのではなか…
150cmライフ。作者: たかぎなおこ出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー発売日: 2003/02/28メディア: 単行本 クリック: 41回この商品を含むブログ (88件) を見る 身長の伸びが150cmでストップして早15年。 p.6(まえがき) ちっちゃい仲間の人…
ワンダー・ドッグ作者: 竹内真出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る 空沢高校にその犬がやって来たのは、一九八九年の四月六日である。 p.5
「僕は、しかし君を、親友だと思つてゐるんだぜ。」実に乱暴な、失敬な、いやみつたらしく気障つたらしい芝居気たつぷりの、思ひ上つた言葉である。私は言つてしまつて身悶えした。他に言ひかたが無いものか。 p.38 私は蟹が好きなのである。どうしてだか好…
津軽作者: 太宰治,みやこうせい出版社/メーカー: 未知谷発売日: 2006/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 或るとしの(昭和十九年)の春、私は、生れてはじめて本州北端、津軽半島を凡そ三週間ほどかかつて一周したのであるが、それは、私…
(略)…しかし祀島、考えてみてほしい。映画の続篇というのはほとんどが駄作でしょう、なぜか。前作の成功ぶりを崇めたたてまつる製作者たちが、その再現を天命のように感じてしまうからです。なぜ続篇が必要なのか、いかなる続篇ならば有意義か、そういった…