作品や・ら・わ行

荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』角川書店

「たしかに、その言葉は現在使われていない。けれども、言葉が消えても関係性は続くんだよ。泉水子には選択権があって、われわれにはない。わきまえろというのはそういう意味だ」 深行は泉水子を指さした。 「これが女神だからとか何とか、そういうトンデモ…

荻原規子『RDG レッドデータガール はじめてのお使い』角川書店

新学期になって日の浅い、四月下旬のことだった。 p.5

小池昌代「りぼん」(『ことば汁』収録)中央公論新社

こんなコレクションを残したことが、ふじこのささやかな復讐に見えた。 p.240

絲山秋子『ラジ&ピース』講談社

逃げ場を探す必要はなかった。自分が人と違うことがこんなに気持ちがいいと思える瞬間があった。 p.49 「世の中には、狂人と変態以外いません」 p.78 ラジオは発信されるものではなかった。人が集まるところにたまたま野枝がいる、そういうことなのだと野…

絲山秋子『ラジ&ピース』講談社

醜いのは野枝自身だった。いつも自分のことばかり考えていた。パーツが小さい地味な顔、寸胴で足の短い体型、身長が低いこと、冒険が怖くて無地の同系色しか合わせられない服装のセンス。性格はといえば彼女はいつも機嫌が悪かった。そしてそれが露骨に表に…

翔田寛『誘拐児』

言ってみれば、あの終戦直後の滅茶苦茶な世の中では、すべての日本人―いや、この国で普通に生活していたあらゆる人間が、生きてゆくことだけで精一杯だったんだ」 「どんな人間でも、いつ何時、凶悪事件を起こしてもおかしくなかった、そういうことですね」 …

翔田寛『誘拐児』

昭和二十一年八月七日。 線路の向かい側に続くトタン屋根が、真夏の日差しを跳ね返していた。 p.5

恩田陸「夜明けのガスパール」(『不連続の世界』収録)幻冬舎

物心ついた頃から、こうしていつも列車に揺られていたような気がする。 いつもいつも、こうして一人で、夜の底を運ばれていたのだ。 眩暈のようなデジャ・ビュを覚えた。次に気付いたら、老人になっているのではないか。レコード会社に勤め、ふわふわ浮き世…

北村薫『野球の国のアリス』講談社

なんでもわかりやすくして手渡されるより、<<わからない>>という宝物をいっぱいかかえることも<<いいこと>>なのです。そして、自分であれこれ考える。 p.10 「ふん、偉そうだね。」 「だってそうじゃない。――痛めつけられたトマトほど甘くなるんだ…

北村薫『野球の国のアリス』講談社

桜の花が、円形のグランドを包んでいる。 p.18

飛鳥部勝則『レオナルドの沈黙』東京創元社

「でも、現代のミステリーにも、その類の趣向は頻繁に現れるわね。ノックスのいう当時の単純なパターンではなく、もっとひねられた使い方をされているけど」 「そういうことさ。つまり、ツイストすれば読者は許す。というより現代では、ツイストするしかない…

飛鳥部勝則『レオナルドの沈黙』東京創元社

私ことT・真壁は、名探偵・妹尾悠二氏を大変に尊敬している。 p.4

垣谷美雨『リセット』双葉社

「まあ、そりゃ立場が違えば、お互いになかなか理解できないわけだけどね……」 p.118 男女同権やら四年制大学やら何や知らんけど、もしも、もっぺん人生やり直せたら今度こそもっと実のある人生にせえへんか。なあそやろ。せっかく生まれてきたんやし、もっ…

垣谷美雨『リセット』双葉社

掃除機のスイッチを切ると、いきなりリビングに静寂が訪れた。 p.5

柴崎友香「六十の半分」(『主題歌』講談社 収録)

「そうか。三十の倍やったら、けっこう最近のことやん」 p.160

岸田るり子『ランボー・クラブ』東京創元社

今の菊巳には、過去も未来も家族の愛情も何もかもが不確かなものになってしまっていた。どちらにも、はっきりとした確証が得られない。まるで空中をさまよっているようだ。 p.187 「僕は自分が誰なのか、それを知る権利があるはずです。でしょう?あなたが…

岸田るり子『ランボー・クラブ』東京創元社

ランボー・クラブ (ミステリ・フロンティア)作者: 岸田るり子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 4回この商品を含むブログ (12件) を見る 菊巳はプリンターの唸るような機械音を聞きながら、パソコン画面の向こ…

道尾秀介『ラットマン』光文社

「この文脈効果に、命名効果ってのが重なると、幽霊はよりはっきりとしたかたちを持ってくる」 「命名効果ってのは?」 谷尾が真剣な顔を向ける。こうしたところ、彼はまったく屈託というものがない。 「たとえばこの絵で言うと、ラットマンだけを単独で見た…

道尾秀介『ラットマン』光文社

ラットマン作者: 道尾秀介出版社/メーカー: 光文社発売日: 2008/01/22メディア: 単行本購入: 3人 クリック: 76回この商品を含むブログ (142件) を見る 「――で?」 iPodのイヤホンを左右の耳から抜き取り、姫川亮は顔を上げた。 p.13 感想はこちら。

黒史郎『夜は一緒に散歩しよ』メディアファクトリー

気がつくと千秋は横にいて、卓郎を見上げていた。千秋の足もとで開かれているお絵かき帳からも、青い顔の女が見上げていた。 p.190 美樹の後ろには、お絵かき帳を持った千秋が笑いながら立っていた。 p.264

黒史郎『夜は一緒に散歩しよ』メディアファクトリー

夜は一緒に散歩しよ (幽BOOKS)作者: 黒史郎出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2007/05/16メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 6回この商品を含むブログ (21件) を見る 千秋が奇妙なものを描くようになったのは三沙子が死んでからまだ一…

フィリップ・リーヴ『ラークライト』理論社

必死だったから気持ちを集中できたんだと思います。もう一度やれっていわれてもぜったいにできません。だって、若い娘がこんなはしたない(はしたないに傍点)こと、とても……」 p.409 大博覧会が開催されんとしている黄金期の1851年のヴィクトリアン朝。錬…

フィリップ・リーヴ『ラークライト』理論社

ラークライト―伝説の宇宙海賊作者: フィリップリーヴ,Philip Reeve,David Wyatt,松山美保出版社/メーカー: 理論社発売日: 2007/08メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (7件) を見る 今から思えば、巨大蛾のポッターモスが目の前にあらわれた…

井上荒野「夜を着る」(『夜を着る』集英社 収録)

どうするべきなのか、どうしたいのか決められないまま、結局光二と同じ嘘バリアーを張りめぐらせて、どんなに打ち明け合っても、じつはちっとも触れ合っていないのかもしれない。 p.135

芦原すなお『ユングフラウ』東京創元社

どいつもこいつも、……そして、わたしも……。 p.284 「つまりですね、あとになって悩むのはいつだって女だってことです」 「ずいぶん古臭いこと言うわね」 「女はいつの時代も同じですよ」 さよりがもっともらしいことを言う。しかし、さよりちゃん、少なくと…

芦原すなお『ユングフラウ』東京創元社

ユングフラウ作者: 芦原すなお出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (8件) を見る 「ほんとにこっちでいいの?」翠はきいた。 p.4

竹内真『ワンダー・ドッグ』新潮社

…ワンダーの尻尾の動きも止まり、その視線は遠くの尾根に向けられた。 周囲に遮るものがない山頂には、それまでの山道とは全く別の景色がある。ワンダーはそれを悟っているのかいないのか、地面に下ろされるとしきりに周りの匂いを嗅ぎ始めた。うろうろと歩…

竹内真『ワンダー・ドッグ』新潮社

ワンダー・ドッグ作者: 竹内真出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブログ (13件) を見る 空沢高校にその犬がやって来たのは、一九八九年の四月六日である。 p.5