作品た行
この世の出来事は全部運命と意志の相互作用で生まれるんだって、知ってる? p.126(「第一部 梢」より) まあ、半分は自業自得というものだ。自分の世界なら自分の作った文脈がどこにでも通用すると思ったら大間違いなのだ。 p.169(「第二部 ザ・パインハ…
今とここで表す現在地点がどこでもない場所になる英語の国で生まれた俺はディスコ水曜日。 p.6(「第一部 梢」より)
「絶対に外れない予言を知っているかい?」 黙っていると、彼はなおくつくつと笑いながら、私の眼をまっすぐに見つめてなぞなぞ(「なぞなぞ」に傍点)の答えを口にした。 「人は必ず死ぬということだ」 p.29 日本がどんな理由で戦争をはじめたにせよ、結果…
スガモプリズン副所長ジョンソン中佐は、机のむこう側に座ったまま、冷ややかな灰色の眼で、たっぷり一分間かけて私を頭の上から足の先までじろじろと眺め回した。 p.5
小さな世界で生きている人の悩みを、軽蔑する人がいる。もっと大きな世界で体を張って生きていると自負してる者たちだ。その者たちは、閉じられた小さな世界に住む者の悩みなんて、とるにたりないことだと信じている。 でも、と典子は思う。そういう人達だっ…
あんたは幽霊だから、だれもきないようなへんな服をきて歩くのよ。庭園であんたが見えるのは、わたしひとりだわ。わたしには幽霊が見えるのよ。」 p.163 トムは「過去」のことを考えていた。「時間」がそんなにも遠くへおしやってしまった「過去」のことを…
裏の戸口のところにひとりで立っていたトムが、もし涙のながれるのをぬぐおうともしないでいたとすれば、それはくやし涙だった。 p.9
見た目とはうらはらに、私の心は、徐々に波を打ちはじめていた。他人から見られる自分と自分の中の自分、ぜんぶ自分なんだけど、どれも違うような気がして、いつも気持ちがざわざわとしていた。 p.62(「一年三組」) 恋にはほんの少しだけ興味があったけど…
小学校生活最後の学活の議題は「中学生になることへの不安」だった。 p.5
「学生さんよ、文学か何かわからんけど、若さだけで血が騒いでいるんじゃないか」 p.45 志強が泣いている。隣のその気配を感じつつも、志強の顔を見られない浩遠は、目をTシャツに据えた。英露の二文字が濡れて、次第に青いインクが溶け、浩遠の目に広がっ…
答案用紙を走るボールペンが一瞬止まった。 p.3
トラクが目を覚ましたのに気づいてウルフがやってくると、まるで仲たがいなど一度もしたことがなかったかのように、陽気に鼻をなめあった。 [ごめんよ]トラクは、オオカミの言葉で言った。といっても、それは今トラクが感じていることの、ほんの一部でしかな…
クサリヘビが一匹、川岸をするすると降りてきて、ぬめぬめ光る頭を水の上にのばした。トラクは、数歩手前で立ち止まり、ヘビが水を飲むのを見守ることにした。 p.5
残念ながら、女がいない。だからなんだ?発明は男だけの特権だとでも? 「創ってやる」 p.21(第一話「天上のデザイナー」より) 自分が大きな苦労を強いられている不動産取引という営みが、本質的にまったく生産的ではないということを認めたくなかったの…
「ねえ、幸せじゃなくちゃいけないなんて、俺はすっげえ傲慢だと思うよ」 勝てなくて悔しくても、幸せじゃなくて悲しくても。 それさえ忘れなければ、きっと大丈夫。蝉の音を聞きながら、悟は思った。 p.170
蝉時雨の中で、悟は目を覚ました。 p.3
私の求めるものは、この世にただひとつの、自分だけのものではなく、むしろ量産品、そこそこの年月、そこそこの数が出回って、使われるうち、ある型におさまってきた、その意味で、最大公約数的な品であるようです。 個性のあるものと付き合うには、拮抗する…
「今日、二人組の男が会社にやって来たよ。君のボタンを押すなって、忠告に来たみたいだ」 彼女は下を向いたまま、わかってる、というように頷く。 「君の背中にあるのは、何のためのボタンなんだ?押したら、いったいどうなるんだ」 p.115
階段を上がってすぐ左手の、表に面した小部屋に入ると、本箱のうしろから白い顔のフクロウが半分だけ顔を出しておれを見ている。 p.4 「ひとつの解答として、君が見たのは君自身の夢であって、今もまだその夢から醒めていないということも言えるよ」彼は微…
「ねえ。誰かが家の前で喧嘩してるよ」浴衣姿の妹がおれの書斎に入ってきて言った。 p.3
封筒にも入っていなくて、ただのルーズリーフにたった四行、黒いボールペンで書かれていた。でも、十分俺を勇気づけた。 ちきしょう。岡野、めっちゃかわいいやん。 ちきしょう。兄貴、やっぱ俺の何倍も賢いやん。 p.263 「人生に疲れてへんの?」 「うーん…
ラブレターを代筆するという話はよくある。 p.4
おまえは、自分自身と、そのこぞうと、全世界を破滅させることになるのだぞ……ひとえに、あやまった愛情のために」 ロード・ロスは、うれしそうにため息をついた。 「おお、このような時があるからこそ、何千年もの長くてたいくつな時をすごす価値があるとい…
デモナータ 6幕 悪魔の黙示録作者: ダレンシャン,田口智子,Darren Shan,橋本恵出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/02/28メディア: 単行本 クリック: 9回この商品を含むブログ (7件) を見る 巨大なサソリのすがたをした悪魔が、ひとりの女性の両目に毒針を…
「私は二千三百年後の世界から来た。だが、ここの未来からではない。多くの滅びた時間枝を渡ってきた」 彌与は息を殺して、男の話に聞き入った。 p.38 時の風はすべてを吹き散らし、時の砂はすべてを埋め尽くす。誰よりもそれらに身をさらしてきたのがOとい…
時砂の王 (ハヤカワ文庫JA)作者: 小川一水出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/10/01メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 227回この商品を含むブログ (237件) を見る 「みよさま……みよさま!」 少年の叫びが木立の中を追ってくる。怒っているようでもあり…
発表の機会に恵まれぬ良作以前に、発表されたにもかかわらず、読まれる機会のないままに流れ去っていく本たちが、私の想像の中から今も忘却され続けている。 p.112 書評氏から私に提示されているものは、ただR氏と私がそれぞれ勝手に書き出したものの類似性…
「なんなんです、ここは!」 「図書館ですよ」 p.84 「鼻を利かせるんだ。つまらない本の匂いを感じるんだ」 本好きはよく「おもしろい本は手に取ったときにわかる」と言う。運び屋の技術はそれを逆方向にぐんと伸ばしたものだ。彼らはわざわざ手に取ること…
ツクツク図書館 (ダ・ヴィンチブックス)作者: 紺野キリフキ出版社/メーカー: メディアファクトリー発売日: 2008/02メディア: 単行本 クリック: 15回この商品を含むブログ (25件) を見る 「ここ、図書館ですか?」 「ええ」 「よかった」 p.1
「僕は、しかし君を、親友だと思つてゐるんだぜ。」実に乱暴な、失敬な、いやみつたらしく気障つたらしい芝居気たつぷりの、思ひ上つた言葉である。私は言つてしまつて身悶えした。他に言ひかたが無いものか。 p.38 私は蟹が好きなのである。どうしてだか好…